田中の胃袋in the city

主にホテルやUSJ、映画やゲームについて書きます。稀にそれ以外の題材も扱いますが、基本的にエンタメ重視でやっていきます。

戦争の知識0な奴が、塚本晋也監督の野火を見てみた

前提として、僕の戦争に対する知識は皆無に近いです。

 

小学校で学ぶ基本的な知識すらないレベルだと思っていただいて問題ないです。いやまあ、はっきり言って問題だらけですが、一旦そこは置いておきましょう。噂によると世界大戦は第二次まであったそうですね。さすがにそれは冗談ですが、まあそのレベルだと思ってください。

 

何故僕の戦争に関する知識が皆無に近いのかと言うと、根本的にそこらへんの背景や事情に興味を持てないからです。そのため、評判のいい戦争映画も世間の反応ほど乗れないことが多く、パッと思い付く面白かった戦争映画と言えば「この世界の片隅に」くらいですね。尤も、「この世界の片隅に」は、戦争映画と言うよりかは、戦時中を舞台にした生活の映画という感じなので、楽しめたのかもしれません。

 

しかし本作――「野火」は、そんな僕のような人間ですら、最初から最後まで塚本晋也監督の圧倒的な演出力でグイグイ引き込まれていきました。

 

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地の匂い、水と空気の匂い、樹液の匂い、めくれ上がる皮膚の匂い、散らばる内臓の匂い、腐りゆく自分の匂い、それら全てが画面を通して伝わって来るような、圧倒的な臨場感とリアリティは、戦争の悲惨さをこれでもかと伝えてくれます。

 

とにかく映像に宿る説得力が凄まじく、見ていてしんどくなってきます。物語らしい物語もなく、ほとんど台詞もなく、そこにあるのはたった一つの、戦争はクソほど地獄であるというストレートなメッセージだけでした。

 

過激な描写や精神的にまいってしまうような描写はたくさんありましたが、それらの中でも特に印象的だったのは、飢えの苦しみです。芋を手に入れるだけでも一苦労で、手に入れたら手に入れたで、仲間から盗まれる危険性が出てくるなど、とにかく飢えによって人が狂っていく様を丁寧に描いています。

 

また、かなりの低予算でありながらも、それを感じさえない作りなのも好印象です。低予算だからという理由で妥協せずに、しっかりと塚本監督らしい映画的なダイナミズムを追求して作られています。次の瞬間に誰が死んでもおかしくない緊迫した画面になっていて、所々で挿入される手ぶれ映像も凄まじい緊張感です。

 

見終わった後は、映画を見た、というよりかは生還した、という謎の安心感がありました。陳腐な言い回しになりますが、鑑賞後は安全な場所で御飯を食べられる、という当たり前のことに感謝します。

 

ちなみに野火ですが、こちらのdtvから見ることが可能です。割とラインナップが豪華なので、最近登録して見まくっています。

 

 

それはさておき、もうじき公開される塚本晋也監督の最新作、「斬、」も楽しみですね。今度は是非劇場に見に行きたいと思います。

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